息を白く吐きながら、ひとりの女性が、ビルの正面玄関にゆっくりと近づいていく。
彼女は、ノア・ビルサービスで20年以上、清掃の仕事をしている。
入口のマットを丁寧にはたき、ガラスを磨き、ロビーのゴミ箱を空にする。
きっと今日も、このビルに出社してくる人たちは、彼女がここにいたことに気づかない。
それでいい、と彼女はいう。
「誰かが気持ちよく一日を始められたら、それで。」
ある工事現場のそばで、ひとりの男性が赤い誘導棒を握っている。
仕事は、車と人を、安全に通すこと。
通り過ぎる一台、一台に、頭をさげる。夏の盛りも、雪のしずかに降る午後も、彼は、そこに立ち続ける。
ドライバーは、彼の顔を覚えていない。それでいい。
「「事故が、起きなかった一日」が、いちばんの一日だ。」
あるオフィスビルを巡回している警備員がいる。年齢は、六十代の半ば。
定年後、もう一度、何かをしたかった。そう静かに笑う。
夜のビルの中はしんとしている。階段、廊下、駐車場。彼が歩く靴音だけが、低くひびく。
仕事は、何も「起こらない」ようにすること。異常がない夜が、明日もあること。
「それが、この仕事のいちばん良い、出来栄えだ。」
朝の清掃と、昼の誘導と、夜の警備。
時間も場所もちがう三人は、同じことをしている。
ひとが、いつもどおりに過ごせるように。
街に、職場に、家路に、「あたりまえの一日」が来るように。
はじまりは、平成元年の冬。
北海道帯広に、小さな会社ができた。
時代は変わり、社員は増えていき、拠点も北海道から首都圏、東北へと広がっていった。
それでも、変わらなかったことがひとつだけある。
それが、ノアが35年をかけて守ってきた、ささやかな、けれど確かな約束だ。
二十代も、五十代も、七十代も、
それぞれの人生に合わせて、長く働ける。
無理せず、誇りを持って働ける。
目立たない、けれど。
警備や清掃は、目立たない仕事だと言う人がいる。
たしかに、テレビで取り上げられることはないし、SNSで拡散されることもない。
でも、私たちの仕事がなくなった瞬間、あらゆる「ふつうの一日」が止まる。
あなたが普段使うどこかに、私たちの社員が立っている。朝にも、昼にも、夜にも。
街は、こうしてつくられている。
あなたが今、このページにたどり着いたということは、
新しい一歩を、考えているということなのかもしれない。
ノアには、特別な人を求めているわけではない。
当たり前のことを、当たり前にできる人。
人を思いやれる人。
すこしの誇りを持って、長く働きたい人。
そんな人を、私たちはずっと、待っている。
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